ロートアイアンにこだわる理由

ロートアイアンのユーロスタイルは、ヨーロッパ、特にフランスの街並みの美しさへの憧憬がベースにあり、それは、厳しく統一された美しい建物、さらにはロートアイアン、大理石、庭園などのパーツの美しさの累積と、それを支える人々の美意識によるのです。

ロートアイアンにこだわる理由

1. 日本の住宅を、街並みを、美しく変えたい!

 プレハブ住宅最大手の一角、最高級分譲住宅会社、輸入住宅のパイオニア会社、建築家コンペ住宅会社、工務店創業など、様々なステージでいろいろな経験を積めば積むほど、日本のあまりに稚拙な住宅環境・汚い街並みを、1軒ずつからでも、1パーツからでも良いから変えていかなければならないと熱望するに至りました。それがこの業界に携わった人間の責任ではないでしょうか。

 住宅も、街並みも、市街地も、繁華街も、あまりに酷いですよね?
 美しさの欠片もありません、これでは尊敬も何も得られませんし、当然観光資源としての価値はありません。こんな国土を造るのに、もう返せないほどの借金を積み上げ、820万戸(2013年度、空き家率13.5%)までの空き家を生じさせ、一向に改善の足音すら感じないどころか、ますます酷くなる一方です。一体なぜ、誰がこんなことにしてしまったのでしょうか。。。

【 なぜ日本の住宅は稚拙で、街並みは汚いのか 】
【 結論的に、住宅シーンを豊かに、街並みを美しく変えていくことで、何が起こるのか 】

2. ツール・ド・フランスで感じた、ヨーロッパの街並みとの決定的な差

 ツール・ド・フランスが趣味となったここ数年、なぜあれだけ長々とした中継(TV中継時間だけで1日当たり3〜4時間程度が実に21日間も)を観ていられるのか、不思議に思いました。

 それはフランスの街並み・風景が(それを形成する直接的には建物・土木・周辺環境、間接的には歴史・文化・芸術が)、あまりに綺麗なことに起因するのではないか、そう気付かされます。

 はっとするほど、また時には涙が出そうなほど、感動的で美しい光景が、何と21日間も続くのです。
それに加えて、延々と続く沿道で応援する地域住民の皆さんの数と盛り上がりを観ると、その文化の集積と深さと拡がりに、もはや尊敬すら覚えます。

 フランスだけ?ではありませんでした。グランツールの他の2レース、ジロ・デ・イタリア(同じく21日間)、ブエルタ・ア・エスパーニャ(同じく21日間)でも、大筋で同じ感想を持ちます。極論すれば、国中のほとんどの数の市街地・郊外において、伝統・文化を大切し、全体的な美しさや、それを保とうという高い意識が共通認識になっているのだろうと推測されます。

 何と素晴らしいことなんでしょう!仮に日本にレースが来てくれたとしても、絵面的に数日間しか成立しないと思います。

3. ヨーロッパの伝統・文化・デザインへの憧憬
 (ユーロスタイルの答えとして、パリスタイルの提唱)

 何がこれほど違うのか!悲しくなるほど決定的な差ですが、しかし、日本にもまだ良いところが残されているはずです。日本が日本らしく住宅環境を豊かにし、街並みを美しく変えていくには、どうしたら良いのでしょうか?それにはまず、その決定的な差から見つめ直した方が良いと思います。

【 ヨーロッパの街並みとの違い(私見) 】

 ただし、ただ単純に、ヨーロッパの街並みを日本に出現させれば良いという訳ではありません。彼らは石の文化であったり、レンガの文化であったり、鉄の文化であったり、日本とは歴史も伝統も文化も宗教も環境も、事情がかなり違う面が多いからです。

 また、日本各地にもそれぞれ培われてきた歴史・伝統・文化・環境があるはずですし、それらはまだまだ捨てたものではないと思うのです。

 それら地域ごとの歴史・伝統・文化・環境を現代日本にマッチングさせ街並みとして再形成するのには、そして日本らしく住環境を豊かにし、街並みを美しく変えていくには、どうしたら良いのでしょうか?

【 日本的に落とし込んでいくと 】

 極論すれば、どのようなデザインでも出来たはずです。街ぐるみで、市民が共通認識を持って、全体のために個々を制限して、美しい街並みだって作れたはずです。

 これまでの住宅シーンにおける、そのデザインこそが問題だったのだと思います。個々の住宅の集合した結果が、今の日本の汚い街並みな訳ですから。
 ここまで述べてきた大掛かりな改革は、100年単位の構想になろうかと思います。私どもの、いや、これを読んでいただけている現代日本人の生きている間には実現しないかも知れません。
 しかし、気付いてしまった以上、心ある、能力のある方々が、ひとつひとつ始めていかなければ、何も変わりません。

【 解決策提示:「ジャパンプライドデザイン」 】

 解決のためのアプローチの一つとして、当然に日本的デザインを最初に考えなければならないと思います。

 ある一定の範囲の街の全員が納得の上で共通して持つべきデザインコード。そしてそれが他の街や、地域や、国や、ひいては世界中から尊敬され注目されるとなれば、それは日本的デザインであるべきです。

 日本古来・固有の文化である木造で、これまで培ってきた伝統や文化を踏襲し、現代人のデザイン性や好みにも受け入れられ、現代の住宅に要求される性能や品質を出せる(公的セクターから無駄に押し付けられた物はすべてそぎ落とし)物を考えますと、私は、以上の写真にあるような住宅デザインに行きつくと結論付けます。

 すなわち...

 以上を、ジャパンプライドデザインとでも名付けましょうか。

【 解決策提示:「パリスタイルデザイン」 】

 解決のためのアプローチのもう一つとして、私どもは、長年に渡る経験から、高級住宅地限定の既に一定割合で建っている邸宅を生かしたデザインコードをご提案します。それが、新しいフレンチモダンデザイン、「パリスタイル」です。

 私どもは幸い、商売の起点を、自由が丘、八雲、駒沢、深沢、等々力、尾山台、奥沢、田園調布。。。名立たる高級住宅地が連なるエリアに置いています。
 このエリアでこそ、このエリアの住民の皆さんにこそ、受け入れられる共通デザイン性向と、その結果形成される街並みは、どんな物がふさわしいのか?常に悩んできましたが、既にこのエリアに比較的多く建っており、また、私どものお客様で非常に多かったのが、本格的な輸入住宅デザイン、中でもフレンチモダンデザインでした。
 ヨーロッパよろしく、これだけ高単価の地価を誇るエリアでありながら、個々のお敷地が広いことが、大きな要因かと思われます。

 どこか伝統的な雰囲気がありながら、瀟洒でもあり、緑や花々が似合い、大理石のベージュが基本カラーであることから街並みが明るく華やぎ、ロートアイアンなどの黒や白や緑青色など装飾が何でも映える、この高級住宅エリアに最適なデザインコードなのではないでしょうか。

 私どもはこれにさらにアレンジを加えて、このデザインコードを
 「パリスタイル」と名付けてご提案します。

 すなわち、

以上を、「パリスタイル」の基本的なデザインコードとしました。

4. フランス文化が移植されたベトナムとの出会い
 (ベトナム=本物を、より安く提供するための物づくりの器)

 ちなみに、ジャパンプライドデザインを推し進めると言っても、これを実際に現場で建てるのは、昔ながらの匠の技と心意気を持った棟梁であるべきです。ここでも物づくりへの回帰がキーワードとなりますが、ことは容易ではありません。現代日本でプラモデル化した住宅建築事情では、この棟梁という存在は、ほぼ絶滅しつつあるからです。
 デザインコードがある程度定められている以上、明治時代以降に発生した建築家という無駄な商売は、ここには必要ありません。これ以前の日本建築は、棟梁が設計段階からすべてを担当していたのです。そこまで考えると、さらに棟梁を育て増やすという命題は、困難至極なものとなってしまいます。
 棟梁という職業の負担を減らすという意味でも、ある一定ロッドの地域で統一したデザインを採らなければならないという意味でも、様々なコーディネーターとしての優秀な住宅営業職が必須となるでしょう。

 さて、それではパリスタイル(=新しいフレンチモダンデザイン)ではどうでしょうか。輸入住宅を建てた方、供給している方、部材を輸入している方であれば身に染みて感じておられると思いますが、ここにも本物と偽物が玉石混交です。
 当然に、何でもそうですが、本物の素材を使ったハンドメイドな物はより深みが増し、長年使えば使うほど良さと価値が増していくものです。ですから、ヨーロッパなどの住宅事情は、数百年という長年に渡って代々手を加えながら、古き良き物を尊重しつつも、徐々に自分色に染めていく深い文化なのではないでしょうか。
 ただ日本において、ヨーロッパの本物でハンドメイドな素材を輸入して、何も考えずふんだんに使っていたら、お金がいくらあっても足りません。そこで、いろいろ代替地での製作を探り始めたり、類似品を工夫して使い始める訳です。

 私どももこれまでは、パリスタイルの原型となった世田谷区A様邸を始めとして、とある日本の安めなロートアイアン業者さんに何度も依頼して製作してもらっていました。日本はロートアイアン文化ではないためか、非常に高価なのが実情です。
 ただ、これがやはり安かろう悪かろうの偽物となってしまい、細くて貧弱なうえ、十分なメッキ処理もされていないことからすぐにサビてみたりと、残念な結果に終わることが多くいつも悩みのタネとなっていました。
 もちろん全体のコストとのバランスですから、必要条件は満たしたものの十分条件までは届かなかったのです。要は、「本物」ではなかった。
 日本における輸入住宅のほとんどが何故かチープに見えてしまい、失敗に終わるのは、このことが原因なのではないでしょうか。

ホーチミンの5つ星ホテル、マジェスティックホテル

ホーチミンの中心地に建つ市民劇場

 そんな中、パリスタイルの原型になった世田谷区A様邸をご覧になり「このままのデザインで建てて欲しい」とまでお気に召していただいた施主様が、たまたまご自身の会社のベトナム事務所を開設中で、ベトナム出張の際にフランスの植民地でもあっ たベトナムではロートアイアンが普通に多用されていて、しかもとても安いことに気が付かれ、ご自身の邸宅では是非ともベトナム製ロートアイアンを試して欲しいという申し出がありました。
どうなるかもわからず、まずはロートアイアンを製作する工場を探しに最初にホーチミンを訪れたのが2013年8月でしたが、最初に驚いたことが、思っていたより綺麗な街だったということです。
 フランス統治時代にフランス人が建築して遺していった、まさに本物のフレンチデザインの建物が今でも多く建っていることや、公園・道路・交差点など街つくりのベースがフランス様式であることも相まって、少しだけパリのエスプリが薫る、そんな雰囲気が残されています。
 さらに、フランス統治時代の名残りなのか、大手アルミサッシメーカーがまだ進出していないせいか、偽物のアルミフェンスなどがまだ普及しておらず、街のいたるところで普通にロートアイアンが多用されています。
 要はこのベトナムという国は、ことロートアイアンという素材に関しては日本より先輩格であり、フランス統治時代にその伝統を移植された、本物の製作拠点であったのです。
 しかもロートアイアンはその製作過程に実に多くの人の手が必要なハンドメイド製品です。人件費も何もかもが高価な日本では不利な素材と言えます。

ホーチミン郊外の工場視察、とにかく人手が多い

別の工場視察、こちらもとにかく人手が多い

 その点、ベトナムは郊外の工場労働者は未だ月給2万円強、日本の1/10以下ですから、これを生かしてより人手を多くかけより手間の掛かった丁寧なロートアイアン製作が可能となります。さらにフランスの流れを汲む本物のロートアイアン文化の国で、素直で勤勉、手先が器用な物づくりに向いた国、しかも日本のことを好きでいてくれる方々が多い親日国となれば、これは大筋では大変なチャンスだと確信するに至りました。

【 ベトナムでロートアイアンを製作する優位性のまとめ 】

※ ただコストを下げるだけでは、安かろう悪かろうになってしまいます。私どもは、むしろロートアイアンでは先輩格であるベトナムの優位性を最大限生かしつつも、コストを抑えられた分、より鉄を太く、よりデザインフルに、より密に、より品質と品格を上げることに回したいと思っています。

現在は、視察した10社ほどの中から、2社に絞って実際の製作を行っています。